ゲームマーケットに出展申し込みをすると、最初に締め切りがやってくるのが「ブースカット」です。
- 何を書けばいいの?
- どこまで情報を載せるべき?
- モノクロで小さいって聞いたけど、どうデザインしたらいいの?
はじめてだと、ここで手が止まりがちですよね。
この記事では、京大ボドゲ製作所の運営者として実際にブースカットを何度も作ってきた経験と、先輩出展者さんの記事で紹介されている考え方をベースに、ブースカットの役割や載せるべき情報、具体的な制作ステップを、やさしく解説します。
ブースカットは「カタログに掲載される広告画像」
ブースカットは、ゲームマーケット公式カタログに掲載される「ブース紹介用の小さな広告画像」です。
- カタログの約 1/8 ページ程度の小さなスペースに掲載される
- ゲームマーケット公式サイトのブースページや作品ページにも表示される
来場者は、当日いきなり会場を歩き回るのではなく、事前にカタログを眺めながら「どのブースを回るか」を決めます。
そのとき、何百ものブースカットが一気に並ぶので、「どんなゲームか一瞬で伝わるか」「目に止まるか」が、当日の売上や認知度に直結してきます。結構大事です!
ブースカットの入稿フォーマット
細かい仕様は開催回によって変わることがありますが、だいたい次のような感じです.。
- モノクロ(グレースケール)での掲載
- カタログの約 1/8 ページサイズの枠内に収まる画像
- 解像度は公式指定どおり(例:350〜600dpi 程度)
- 指定のテンプレートでGoogle フォームから入稿
※ブースカットの「サイズ・解像度・ファイル形式」は、必ずその回のゲームマーケット公式サイトの出展案内で最新情報を確認してください。
実際に入稿したブースカット画像▼

実際にカタログに掲載されたブースカット画像▼

ブースカットに載せるべき情報を考える
ブースカットはスペースが小さいので、情報を詰め込みすぎると逆に何も伝わらなくなります。まずは「載せる候補」を全部出し、その中から優先度の高いものだけを残していくイメージで考えましょう。
ブースカットに載せておきたい情報の項目リスト
ゲームタイトル(またはブランド名)
一番大きく、目立つように配置しましょう。複数ゲームを出す場合はそのイベントの「推しタイトル」一本に絞るか、または「ブランド名」をメインに据えるかを決めると良いです。
メインビジュアル(イラストや写真)
箱絵・キービジュアル・プレイ風景など、一枚で雰囲気が伝わる画像を大きく使いましょう。細かくごちゃごちゃした画像より、「一目で分かるモチーフ」がおすすめです。
キャッチコピー(1行)
「誰の」「どんな体験」が「どう変わるのか」が一瞬で伝わる強いキャッチコピーを考えましょう。例えば、以下のような感じです。
- 「遊びながら株の基礎が身につくボードゲーム」
- 「読み合いにハラハラする2人用心理戦カードゲーム」
一言紹介(2〜3行)
キャッチコピーを補足する短い説明文を書くのも良いでしょう。ただし、あくまでカタログをじっくり読む人向けに、もう一歩踏み込んだ情報を書ける程度です。あまり情報を詰め込みすぎると、かえって何も伝わらないカットになってしまうのでよく注意し、言葉を吟味しましょう。
プレイ人数・時間・対象年齢・価格
ゲームマーケットの参加者が「自分たちに向いているか」を判断する材料になる部分ですので書いておきましょう。例えば「2–4人/30分/10歳〜/3,000円」のような感じです。
ブース名・サークル名・SNS アカウント
ブース名を覚えてもらえると、会場で見つけた時に認知をしてもらうきっかけになります。また、SNSで最新情報やルール説明を発信している場合、カタログからSNSに飛んで、チェックしてもらう動線になるのでこちらも書いておくと良いです。
あえて「削る」勇気も大事
載せたい情報を全部詰め込むと、「文字が小さくて読めない」「どこを見ればいいのか分からない」「目に留まりにくい」という状態になりがちです。
ブースカットでは、「一瞬で目に入る”タイトル・ビジュアル”」「少し興味を持った人が読む”キャッチコピーと一言説明”」「購入を検討する人が見る”人数・時間・価格”などの細かい情報」という三段階の構造を意識して、下の層にある情報から優先的に削っていくと整理しやすくなります。
作る前に決めておきたい3つのこと
いきなりソフトを開いて作り始めると、ほぼ必ず迷子になります。
ブースカットは小さいので、「何を一番強く伝えるか」を先に決めるのが大事です。
1. 誰に見てもらいたいブースなのか
- コアなボードゲーマー?
- 家族連れやカップル?
- 教育関係者や先生?
ターゲットによって、
- 使う言葉(専門用語/やさしい言葉)
- 雰囲気(硬派/ポップ/ゆるい)
が変わってきます。
2. ゲーム/ブースの「強み」は何か
参加者の目線で、ゲームやブースの強みを箇条書きしてみましょう。例えば、次のような観点で洗い出してみます・・・
- プレイ時間が短くてサクッと遊べる
- 初心者でも分かりやすい
- コンポーネントの見た目がリッチ
- 学びや教育要素が強い
- 2人専用で対戦が熱い
ブレストをしてから、その中で本当に伝えたいものを1〜2個に絞ると、デザインの方向性が決めやすくなります。
3. ブース全体の世界観とのつながりを考える
ブースカットは、当日のブース装飾ともつながる「顔」の一部です。
- ブースのテーマカラー
- サークルロゴの雰囲気
- POP・ポスターのトーン
と世界観を揃えておくと、当日ブースの前を通った人が
「あ、このカットで見たブースだ!」
とすぐに気づいてくれます。
実際の作り方をステップごとに紹介
実際にブースカットを作るとき、ソフトは割となんでも大丈夫です。Illustrator・CLIP STUDIO・Canvaなどのデザインツールでも良いですし、GoogleスライドやPowerPointなどのスライドツールでも十分作れますよ。
Step 1:公式テンプレートと仕様を確認する
- 出展案内から、ブースカット(サークルカット)の項目を探す
- サイズ・解像度・カラーモード・入稿形式(JPEG/PNG など)を確認
- テンプレートデータ(PSD 等)が配布されていればダウンロード
毎回ここから始めるクセをつけておくと、安全です。
Step 2:素材を集める
制作前に、最低限このあたりの素材を揃えておきましょう。
- ゲームタイトルのロゴデータ(画像/ベクター)
- メインイラスト or 写真
- 箱やコンポーネントの写真(必要なら)
- 使用したいフォント
- テキスト原稿(タイトル・キャッチコピー・2〜3行の説明文・ゲームの人数、時間、年齢、価格・ブース名・SNSアカウント)
先にテキストを文章として書いておくと、後で「文字数が合わない!」という手戻りも減ります。
Step 3:ラフデザインを 3〜4 パターン作る
いきなり一案に決めず、最初はざっくりしたラフで複数パターンを作ってみましょう。
典型的なレイアウトの例:
- 大きなイラストを中央に置き、下部に情報をまとめる王道パターン
- 上半分をビジュアル、下半分を情報エリアにする上下2分割パターン
- 左にビジュアル・右に情報、もしくはその逆の左右2分割パターン
- 斜めの線や大きな図形でエリアを区切る変化球パターン
この段階では、
- グリグリ細部を作り込まない
- 「タイトル」「ビジュアル」「情報」がどこに来るかだけを決める
くらいの感覚で OK です。
Step 4:実寸サイズで印刷して読めるか確認
画面上で見ると十分大きく見えても、カタログサイズまで縮小されると一気に読めなくなることがあります。
- 公式指定のサイズで一度プリントアウトする
- 離れて眺めて「どこが目に入るか」をチェック
- 最小サイズの文字(説明文など)が読めるか確認
ここで気づいた点に合わせて、
- 説明文の文字サイズを 1〜2pt 上げる
- キャッチコピーの文字数を削る
- イラストをもう一回り大きくする
などの調整を行います。
Step 5:情報を整理して「削る」
プリントしてみて「ごちゃついている」と感じたら、情報を削ることを考えましょう。「全部を説明しよう」とせず、「このブース、気になるから詳しく調べてみよう」と思ってもらえれば成功、くらいの感覚がちょうどいいです。
1. 似た情報をまとめて一行に圧縮する。例えば「2–4人/30分/10歳〜/3,000円」のような感じで。
2. カタログの他の場所で分かる情報(ブース番号など)は思い切って省く
3. 文の装飾(カギカッコや絵文字)を減らして読みやすくする
Step 6:モノクロでの見え方を最終チェック
最後に、モノクロ印刷されたときの見え方を必ず確認しましょう。
- カラーデータで作った場合は、グレースケールに変換してみる
- 中間的なグレーばかりになっていないか確認
- タイトルや重要な情報は、白地に黒文字/黒地に白文字など、強いコントラストで配置
中間色のグレーを多用すると、カタログで他のブースカットと並んだときに、ぼやっとして埋もれやすくなります。後述するように、「黒い面」と「白い面」をしっかり作ることを意識すると、モノクロでも映えるブースカットになります。
モノクロで映えるデザインのコツ
ここでは、ちょっとした工夫で見やすさがグッと上がるポイントをまとめます。
明暗のコントラストをしっかり付ける
- タイトルの背景を黒ベタにして、白抜き文字にする
- 逆に、真っ白な帯に黒文字でキャッチコピーを載せる
- イラストも「明るい部分」と「暗い部分」がはっきり出るように調整する
「薄いグレー地に薄いグレーの線」のような組み合わせは避けましょう。
視線の流れを 1 本にする
小さいスペースの中でも、
- イラスト(全体の雰囲気)
- タイトルロゴ
- キャッチコピー
- 詳細情報
のように、視線の流れを一方向に流すと読みやすくなります。
情報をあちこちに散らばせると「どこから読めばいいか分からない」状態になりやすいので、ブロックごとにまとめましょう。
文字の「種類」と「大きさ」を絞る
- フォントは 1〜2 種類まで
- 文字サイズは大・中・小の 3 段階くらいまで
に絞ると、全体がすっきりまとまります。
タイトルだけ遊びのあるフォントを使い、その他は読みやすいゴシック体にする、などの組み合わせが扱いやすいです。
細すぎる線・小さすぎるディテールは避ける
- 細かい模様や細い線は、モノクロ印刷で潰れがち
- 人物やキャラクターは、輪郭がはっきり分かるくらいの線の太さにする
「画面上ではギリギリ見えるけど、印刷すると見えない」という部分は、思い切って削るか、図形を大きくしましょう。
写真を使うなら「1枚+大胆なトリミング」
写真をたくさん並べるより、「一枚だけに絞って大きく見せる」「伝えたい要素が一番映える部分を大胆にトリミングする」方が、圧倒的に目に入りやすいです。
ブースカットを作ったあとにやるべきこと
ブースカットは作って終わりではなく、いろいろな場所で再利用できる便利な素材です。
1. ゲムマの作品ページ・ブースページと連携
- ゲームマーケット公式サイトの作品ページにも、ブースカットと同じ画像が表示されます
- ページ内の説明文や画像とテイストを揃えると、全体の印象がまとまります
2. 当日のブース装飾に流用する
- ブースカットをそのまま拡大して、ポスターや A3 POP にする
- テーブルクロスやパネルのデザインの核にする
事前にカタログで見たビジュアルと、当日のブースがリンクすると、ブースの「分かりやすさ」が一気に上がります。
3. SNS やオンラインショップでも活用する
- X(旧Twitter)の固定ポストやヘッダー画像に流用
- オンラインショップの商品サムネイルに応用
- イベント告知画像の一部に組み込む
一度作り込んだブースカットは、「ゲームの顔」になるアセットとして様々な場所で使えます。
ゲームマーケット公式サイトの「ブース一覧」に載った京大ボドゲ製作所のブースカットは以下のような感じです。

ボドゲを作っています
様々なオリジナルゲームを企画・開発。





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