ゲームマーケットに出展してみたいけれど、何から始めればいいのか分からない……。 そんな人のために、気になる疑問点がひと通り分かるようにまとめてみました。
この記事では、以下の3つの記事の内容をベースにしつつ、公式情報も踏まえて整理しています。
- ゲムマ出展費用
- 個数・値付けの考え方
- 申し込み〜当日までのToDo
「とりあえず1回出てみたい」「何個作ればいいの? 赤字にならない?」という疑問を持っている人はぜひ参考にしてみてください。
1. ゲームマーケット出展までにざっくりやること

ゲームマーケットとはどんなイベント?
ゲームマーケット(通称ゲムマ)は、ボードゲーム・カードゲーム・TRPGなどアナログゲーム専門の即売会です。春と秋の年2回開催され、来場者は2万人を超える大規模イベントになっています。
会場には、
- 同人・インディーズの新作ゲーム
- 企業ブースの新作・限定品
- 試遊卓やステージイベント
などが並び、出展者は自作ゲームを直接お客さんに手渡しで販売できます。
当日の雰囲気を知ってみたいという方は、こちらのレポート記事も参考にしてみてください。
出展までのステップ
細かい話の前に、「何をいつまでにやるのか」の全体像をざっくり見ておきましょう。
- 出展プランを決める(一般出展/チャック横丁/ゲムマ・チャレンジ など)
- 出展申し込み(開催の約6か月前)
- 当落発表 → 出展料の入金
- ブースカット・カタログ情報の提出(約3か月前)
- ゲームのデザイン・製造発注(〜2か月前)
- ブース装飾・つり銭・持ち物の準備(1か月〜2週間前)
- 当日の設営・販売〜撤収
2. 出展プランを選ぶ
出展の最初の選択は「どの枠で出るか」です。ここを決めると、必要な準備や作る個数も見えやすくなります。
一般出展(通常ブース)

もっともベーシックなのが一般出展。
- 机1本分(または複数)のブーススペース
- 自由に装飾・ポスター掲示や試遊できる
- 1日だけ/両日出展は選べる
出展料は開催回ごとに変わりますが、目安としては「1日・机1本・試遊なし」で1万円台前半からという水準です(必ず募集要項で最新の金額を確認してください)。
一般出展は自由度が高い分、
- ゲームを複数タイトル並べたい
- パッケージや装飾も作り込みたい
- ブランドとして継続的に出展していきたい
といった人に向いています。
チャック横丁(初出展向けの小さめプラン)
初出展向けのプランとして用意されているのが「チャック横丁」です。
主な特徴は次のとおりです。
- 箱ではなく、チャック袋入りのゲームのみが対象
- 出せるゲームは1種類・最大100セット程度
- チャック横丁エリアに小さなお店が並ぶイメージ
- 装飾はかなりシンプルでOK
- 出展料は一般出展よりも安め
「まずは1作品を小ロットで出してみたい」「箱や大掛かりな装飾はハードルが高い」という人に向いている枠です。
ゲームマーケット・チャレンジ(お題付き企画枠)
もう1つ、初心者を含め多くの人が参加しやすいのが「ゲームマーケット・チャレンジ(ゲムチャレ)」です。
- 毎回「○枚以下のカードゲーム」などお題が設定される
- 条件を満たした作品は特設コーナーにまとめて展示
提携印刷所の特別パック(萬印堂ベーシックパック、ポプルスのフェアなど)が用意されることもあります。
ゲムチャレは「専用の販売ブース」があるわけではありませんが、以下のメリットがあります。
- ゲームづくりの制約がはっきり決まり考えやすくなる
- 特設コーナーに並ぶことで、来場者に見つけてもらいやすくなる
- 印刷費のハードルが下がる場合がある
参考:いくつ作れば?値付けどうしたら?ゲームマーケット出展費用について考える(note)
3. いつ何をやる?出展までのスケジュール

ここからは、申し込み〜当日までに「いつ・何をするのか」を、だいたいの時系列に沿って整理します。
3-1. 約6か月前:出展申し込み&当落待ち
- 公式サイトで開催日と出展募集期間を確認
- 募集要項・出展規約を読む
- 一般出展かチャック横丁かなど、プランを決める
- Webフォームから申し込み
ゲームマーケットの出展は抽選制です。申し込んだら、当落発表を待つことになります。
3-2. 約4か月前:当選後、出展料の入金
当選したら、まずは出展料の入金です。期日までに支払わないと、出展権を失うこともあるので要注意です。
このタイミングで、
- 印刷所にざっくり見積もりを取り始める
- 制作スケジュールを引き直す
といった動きも始めると、後がかなり楽になります。
3-3. 約3か月前:ブースカット・カタログ原稿
開催の3か月前くらいになると、ブースカット(カタログに載る小さな広告)の提出依頼がきます。
- 文字を詰め込みすぎず、「読める文字の大きさ」を優先
- アイキャッチになるイラストやタイトルを大きく
- 詳しい説明はQRコードなどで自サイトや通販ページに誘導
この頃までに、
- タイトル・ジャンル・テーマ
- パッケージ案(仮でもOK)
- 3行くらいのキャッチコピー
は固めておきたいところです。
3-4. 3〜2か月前:製造発注のピーク
印刷所にとって、ゲームマーケット前は一年でいちばん混み合う時期です。例えば、萬印堂を例にとると、以下のようなこともいわれています。
- 通常は製造1か月程度で済むところ、ゲムマ前は2か月以上ほしい
- 早期割引(ゲームマーケット向け早割)を設定している
入稿までにデザインのフォーマットなどでつまづく場合もあることを考えると、この時期までに以下は済ませておくと安心です。
- テストプレイ・ルールの確定
- コンポーネント(カード枚数・トークン・箱サイズなど)の構成を確定
- 印刷所の見積もり・発注
- デザインのデータ入稿
自作ボードゲームの作り方については、以下の記事で詳しく解説しています!
3-5. 約1か月〜2週間前:ブース装飾・つり銭・持ち物
ブース装飾の準備
- タペストリー・ポスター・テーブルクロスなどを印刷します
- 卓布は防炎ラベル付きの布が推奨
ブース装飾の細かいルール(高さ制限・はみ出し禁止など)は出展者に配布される「出展者の手引き」で確認しておきましょう。
つり銭・決済手段
- 千円札・100円玉を中心に、十分なつり銭を用意
- 価格設定によって必要な硬貨の種類・枚数が変わるので、あらかじめシミュレーション
- PayPayなどのQR決済を導入する場合は、審査に時間がかかることもあるので早めに申し込み
現金のみの出展者が多いため、参加者も現金を用意していることが多いですが、ライト層の方やゲムマ初心者の方にも取りこぼしなく買ってもらいたいという場合は、QR決済やクレジットカードなどにも対応しておくと良いでしょう。
持ち物チェック
- 出展者証・ネームカード
- つり銭・コイントレー・計算機
- ガムテープ・養生テープ・ハサミ・筆記用具
- 値札・POP・説明用チラシ
- 飲み物・軽食・常備薬・のど飴など
参考:【ゲムマ出展するには?】申し込みから当日までにやること(盤上遊戯組合)
4. 何個作る?いくらで売る?発注数と価格の考え方

「何個作ればいいの?」「いくらで売るのが普通?」というのは、出展希望者の共通の悩みです。ここでは、先人のデータや印刷所のコラムをもとに、初出展の現実的なラインを整理します。
4-1. 初出展で作る個数の目安
印刷所・萬印堂のコラムでは、初出展の目安として「50〜100セット」がすすめられています。
- たくさん作るほど製造単価は下がる
- ただし売れ残りリスクが上がる
- 50〜100セットなら、完売しても大きな利益は出にくいが、在庫リスクは抑えられる
また、他の出展者のnote記事などを見ても、初出展で「50個未満」「100個未満」という人が多く、「50個売れたら上々、100個売れたらかなり健闘」くらいの感覚で計画するのが現実的だと分かります。
4-2. 価格の相場感
同人ゲーム全体で見ると、
- 全体の中央値はおおむね2,000円前後
- 36枚以下のカードゲームだと、1,500〜2,000円が多い印象
- チャック袋入りの小さなゲームは、500〜1,000円の価格帯もよく見られる
一方、印刷所の側から見ると、
- 一般的な市販品は「製造単価の3倍以上」を定価にすることが多い
- しかし50〜100セットなど少部数だと単価が高くなるため、同じ比率を当てはめるのは難しい
- 実際の同人出展では「製造単価の2倍前後」を目安にしている例が多い
という状況です。
4-3. 「利益重視」か「遊んでもらう優先」か
価格を決める前に、次の2軸を一度はっきりさせておくのがおすすめです。
- 目的:利益をきっちり出したいのか/赤字でもいいから遊んでもらうのを優先するのか
- 販路:ゲムマの直接販売だけなのか/ショップ委託や通販も前提にするのか
ショップ委託も見込む場合は、委託手数料や送料などを価格に乗せておく必要があります。そのうえで、「通常価格(通販・委託用)」「イベント価格(ゲムマ当日用)」の二段構えにしているケースも多いです。
4-4. ざっくり試算の例
ここからは、参考記事に出てくる数字を元にした「イメージ」です。実際には必ず自分で見積もりを取り直してください。
パターンA:チャック横丁+DIY制作(カード36枚・100セット)
- 名刺印刷・チラシ印刷・100均チャック袋などを組み合わせて制作
- 100セット作って総コスト 約3万円
- チャック横丁出展料 約5,500円
- 合計 約35,500円 → 1セットあたり約350円
この場合、1セット500円で売ると、1個あたり150円前後の粗利です。
- 100個全部売れても大きな利益は出ない
- ただし「ローリスクで経験を積む」プランとしては悪くない
パターンB:一般出展+印刷所カードゲームパック(50〜100セット)
- カード36枚+箱+説明書を、50セットで約3万〜4万円
- 100セットなら7万円前後になることも
- 一般出展1日分の出展料(1万円台)、装飾費・交通費などを加える
例として、
- 制作費:50セット 38,500円
- 出展料:1日 12,000円
- 装飾・交通費:10,000円
とすると、合計60,000円程度。50セットしかない前提だと、1セットあたりの総コストは約1,200円です。
- 1,500円で完売すればトントン〜小さな黒字
- 2,000円なら黒字幅は出やすいが、売れ行きとのバランスを見る必要あり
参考:ゲームマーケット出展費用について考える(note)
参考:ゲームマーケット 出展者になろう(萬印堂)
5. 当日までに押さえておきたいポイントまとめ

最後に、初出展で特につまずきやすいポイントをチェックリスト的にまとめておきます。
5-1. ゲームの完成度と説明のしやすさ
- ルールは「説明しやすさ」を意識して整理する
- 当日は声が枯れやすいので、A4一枚くらいのルール要約や「3行で魅力が伝わる」POPがあると便利
5-2. ブースデザイン・ブースカット
- ブースカット:小さいスペースでも読める文字サイズとシンプルな情報量
- パッケージ現物を積み上げる
- タペストリーやポスターでタイトルとイラストを大きく見せる
など、遠目から見ても「何のゲームか」が伝わるように意識しましょう。
5-3. 装飾ルールと安全面
- ブースのスペースからはみ出さない
- 掲示物の高さ制限(床からの高さ・机上からの高さ)が定められている
- 卓布は防炎・難燃素材が推奨
- 通路に荷物を置かない
これらはすべて「出展者の手引き」「出展規約」に細かく書かれているので、必ず最新のPDFを読み込んでおきましょう。
5-4. 体力と人員計画
- 1人出展だと、トイレや昼食に行く時間を確保しづらい
- 可能なら2人以上で交代しながら対応するのが安全
- 荷物は台車やスーツケースにまとめて運ぶ
- 会場内はかなり歩くので、履き慣れた靴で参加する
5-5. イベント後のことも考えておく
- 売れ残り在庫をどうするか(通販・BOOTH・ショップ委託など)
- 続編や拡張を出す可能性があるなら、シリーズ名やブランド名を先に決めておく
6. まとめ:最初の一歩は「小さく・楽しく・続けられる形」で
初めてのゲームマーケット出展は、
- 何をいつまでにやるのか
- 何個作ればいいのか
- 赤字にならないのか
と、不安になりやすいポイントがたくさんあります。
ただ、
- 50〜100セットくらいの小さなロットで
- チャック横丁やゲムチャレも活用しながら
- 「まずは1回、経験として出てみる」
というスタンスなら、リスクを抑えつつ「自分のゲームを世に出した!」という大きな一歩を踏み出せます。
このガイドをベースに、あとは公式サイトや他の参考記事を読みつつ、自分のゲームに合った計画に落とし込んでみてください。
ボドゲを作っています
様々なオリジナルゲームを企画・開発。






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